キライ、じゃないよ。
「護ってば遅い〜。遅刻……って、あれ?樫くん?」


会場前、受付の所で手を振って私を呼んだのは香だった。

確か受付を頼まれたって言ってたっけ。


「幸島、久しぶり。山近来てる?」


受付で記帳しながら、香の事は迷う事なくそう呼んで笑顔を向ける樫。

ほんの少し嫉妬してしまったよ、香に。

いいな、香はちゃんと覚えていてもらってたんだって。


「宏也なら名前1番に書いて今会場で同窓生相手に営業してるよ」


呆れ半分で香が言い、会場を指差す。


「山近のやつ、去年前のとこやめて、自動車メーカーに再就職したからな。相変わらず落ち着きねぇのな」

「宏也の辞書には、生涯落ち着きという言葉は載ることはないわ」

「香は相変わらず手厳しいなぁ」


大きく溜息をついた香の背後からいきなり現れた山近くんが、鼻を啜って泣く真似をしながら情けない顔で樫に縋りついていく。


「アンタ高校の時から成長したの、身長位じゃないの?」

「ひでぇ。んなことねぇわ。見ろ!この滲み出る男の色香を!」


腰に手を当て踏ん反り返る山近くんに私達は揃って吹き出した。

懐かしい面々が集まってこんな風に話してる姿を見てると、まるで高校時代に戻ったようだ。

ヤンチャな山近くんを、香と樫の2人が呆れ顔で諌める所、懐かしい。

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