キライ、じゃないよ。
「お前らも並んでると、あの頃と変わんねぇなぁ……」


山近くんが樫と私をジッと見つめてしみじみとした口調で言う。

変わらない?そうなのかな。でも、樫は私の事すっかり忘れてたみたいだし、山近くんだけがそう思ってるのかもしれないよね。

そんな風に考えたら山近くんの言葉にどう答えたらいいのか分からなくて戸惑ってしまう。


「それを言うなら山近と幸島だろ?山近同窓会の話来た時、まず幸島の事気にしてたしなぁ」


「なっ、オイッ、樫、お前なぁ……っ」


樫の言葉に慌てた様子で、だけど誰よりも香の反応が気になるらしい山近くんは、香の方をチラチラ見ながら大袈裟なくらいゴホンゴホンと咳き込んでいる。

へぇ。山近くんって今も香の事を。

きっとこの同窓会で、よりを戻したいと考えているのかもしれなくて、それを樫に相談していたってところかな?


香と言えば、一瞬唖然とした表情の後、見る間に赤くなった顔を片手で隠しながら「バッカじゃないの?」なんて盛大な照れ隠しで声を上げている。

なんと微笑ましい図柄だろう。

香の本心に気づいている私としては、大いに協力させていただきたいところだ。


「皐月、中に入ろう」


この場の邪魔にならないようにと気遣ったのだろう、2人を置いて樫は私を会場へと誘う。

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