キライ、じゃないよ。
「護?」


賑やかな店内で、名前を呼ばれたことに驚きつつ顔を上げると目の前に樫がいた。


「樫?え、どうしてここに……」


言いかけて、樫の後ろに見えた人影に気付いて息をのんだ。

樫の後ろに隠れるように立っていたのは、田淵さんだ。

その後ろから現れた人影に気付いて、さらに驚く。


「原川さん、田淵さんも……」


まさかこんなところで3人に出会うなんて思わなかった。


「樫くん、原川さんに田淵さんも、偶然だね」


八田くんが3人に笑顔で話しかけている。


「びっくりした!八田くんと皐月さんってそういう関係なんだ」


原川さんが近づいて来て、店内の雑音に負けないくらいの声を上げる。


「そういうって……友達と一緒に飯食いに来てるだけじゃん」


八田くんが呆れた様子で答え、「そっちこそ、珍しいメンバーだな」と逆に聞いている。


「ねぇ、隣の席空いてるじゃん。店員さん、私達ここでいいかな?」


原川さんは案内して来た店員に尋ねつつも、既にブーツを脱いで上がり込んでいる。

別に問題はなかったのだろう、店員も何も言わず、結果3人は私達の隣の席に座ることになった。


女子2人が奥に入り、樫が八田くん側に座ったことで、樫と自然、目があってしまう。

何故か不機嫌な樫の表情に、声をかけることすらできず、網の上の肉をひっくり返しては八田くんに勧めていた。


< 93 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop