優しいあなたの嘘の法則



『また』は案外早く、唐突に訪れた。

「げ、」
「………………おいおい『げ』はないでしょ」
「悪い心の声が漏れた」
「………想くん、私のいるところに先回りしてんの?」
「こっちのセリフだわ」

平日の昼下がり、ゆるやかなピアノの音楽が流れるカフェの店内は利用客でいっぱいだった。買ったコーヒーを右手に店内を歩きながら空席を探していると、店内の奥の方の2人席に、見慣れた綺麗な黒髪があった。

もしかしてと思い近づくと、それはやっぱり想くんだった。私の視線に気付いたのか、想くんはこちらを見た。私を見ると綺麗な目を大きく見開いて、これまた綺麗な顔を歪ませた。せっかくのイケメンが台無しである。

「混んでて他に席空いてないから一緒に座ってもいい?」
「いーよ。どうせすぐバイトでいなくなるしな」

それではお邪魔します、と告げ先ほど買ったコーヒーをテーブルの上に置いて、想くんの向かいの椅子に腰を下ろした。



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