優しいあなたの嘘の法則



私は、雑誌コーナーで目当てのファッション誌を手に取ると、レジへと持っていった。レジに立つ想くんは何食わぬ顔で代金を受け取る。

お釣りを渡される時に、一瞬触れる手にドキッとするのも、きっと私だけ。そう思うと虚しい気持ちになった。レジを出るとき、通りすがりに一之瀬さんと目があった。目があった瞬間優しく笑う一之瀬さんを見て、少しだけ元気が出た。本屋での用事が済んで、駅へと向かうべく本屋を出ようとしたとき、ちらりと後ろを振り返って遠くの想くんを見つめる。何やら一之瀬さんと話しているようだ。会話の内容までは聞こえなかった。

「一之瀬、あのさー」
「?うん?」
「もしかして実希ちゃんのこと好き?」
「え?!なんでわかんの?!」
「でも前にフったんだろ?」
「まあ、そうなんだけど…」

遠くから見ても綺麗な黒髪が、照明の光に反射して眩しかった。

その週はそれ以来大学でも会えず、バイト先に行くこともなく、想くんと会えないまま一週間が終わった。

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