優しいあなたの嘘の法則



想くんに突き放すような言葉を投げかけられたあの日から、なんだかんだで本屋には一度も行けていない。

蔑むような目に冷たい言葉。突然別人のように変わってしまった想くん。
一体何があったんだろう。たまたまバイトで嫌なことがあって、ものすごく機嫌が悪かったのかな。それとも、本当に私、嫌われちゃったのかな。嫌われるようなことをした覚えは全くないんだけど。

やっぱり想くんの態度が気がかりで、実はあれから3回くらい本屋に行こうとした。けれど、本当に嫌われていたらと思うと、もう一度あの冷たい目で見られると思うと、入り口で足が止まってしまうのだ。

かくいう今日も、私は相変わらず本屋の前で何もせず突っ立っていた。見慣れた看板を、ぼうっと見つめてかれこれ10分になるだろうか。

「…………かえろ」

ぽつりと呟いて回れ右をすると、突然後ろから手を掴まれ、腕を引っ張られた。びっくりして振り返ると、私服の一之瀬さんが立っていた。


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