優しいあなたの嘘の法則
「学部は?」
「経済だよ」
「あ、俺も経済」
だからか、と私が呟くと想くんが不思議そうな顔をした。
「どっかで会ったことあるなあって思ったんだよね」
「初対面だよ。会ったことない」
「じゃあ、大学で何回か見かけたからそう思ったのかな?」
私が手を顎に当ててそう言うと、隣に座っていたななこちゃんが「実希ちゃんそれ口説き文句みたいだよ」と言って笑った。たしかにそうだ。恥ずかしいことを言ってしまったな。
いや、でも口説き文句などではなく、本当に見たことがあるのだ。大学生の中ではあまり見かけない真っ黒な髪の毛は、サラサラで清潔感が感じられる。思わず嫉妬してしまうほどに綺麗な髪だった。
「でも口説きたくなる気持ち分かるよ。めちゃくちゃかっこいいもんね。想くん」
ななこちゃんは興奮してそう言った。たしかにななこちゃんの言った通り、想くんはかなり整った顔立ちをしている。綺麗な黒髪から覗く二重の目。ほくろひとつない綺麗な肌。血色のいい唇はぷっくりと膨らんでいてセクシーだ。着ている清潔感のある白いシャツがさらに彼の容姿を引き立てている気がした。まじまじと想くんを観察していると「あんまり見ないでよ、照れるじゃん」と、綺麗な唇に弧を描いてそう言った。その笑顔にななこちゃんは目をハートにして、顔を真っ赤にさせた。その一部始終を見て、女慣れしてそうだなあという印象を受ける。