優しいあなたの嘘の法則
「実希ちゃんとななこちゃんは、どうして合コン参加したの?」
そのとき、ななこちゃんの向かいに座るダイキくんに話しかけられた。
「ずっと好きだった人についこの間好きだった人にふられちゃって」と私が言うと、
「わたしたち恋人絶賛募集中でーす!」
と、ななこちゃんが私の肩を組んでそう言った。
「ななこちゃん、俺とかどう?」と、ダイキくんが目をキラキラさせて言うのをななこちゃんはスルーして「ダイキくんより想くんがいいなあ」と想くんを上目遣いで見つめた。
想くんはななこちゃんの言葉に、枝豆に手を伸ばす手を止めた。「ごめん、前の彼女のこと、ふっきれてなくて。今は彼女とかは、いいんだよね」と眉を下げて困ったように笑った。
「今回も人数合わせのために呼ばれただけだしね〜」
「あれ、そうだっけ?」
と首をかしげたダイキくんに、想くんは枝豆を口に入れながら「そーそー」と間延びした返事をした。
「そっかー。残念だなあ」と言ったななこちゃんは、本当に悲しそうだった。本気で想くんのこと狙っていたんだということがその姿からとても伝わった。
空気がしんみりとしてしまったので、場を和ませようと「ま、まあせっかくの飲み放題だからたくさん飲もう!」と私がいうと、ダイキくんものってくれた。
その後、当たり障りのない会話をしていると、あっという間に飲み放題の終了時間になった。大学の最寄り駅までみんなで向かい、そこで解散となった。
満員電車の中で揺られながら、きょうの出来事を反芻した。誰ともいい感じの雰囲気にならなかったなあ。唯一話せた想くんには、恋愛対象すら見られていなさそうだ。元カノを想っているのか、とても切ない表情を浮かべていた。想くんの苦しそうな顔が、なぜか頭から離れなかった。