優しいあなたの嘘の法則
「合コンの時も思ったけど。別に、無理に諦めなくてもいいんじゃない?」
「だってふられたんだよ、私」
「別に不倫とかじゃないんだしいいじゃん。無理して忘れなくていいんだよ。ゆっくりで」
「っ、」
そう告げた想くんの声は、これまで聞いたことのない、優しいものだった。その声音に驚いた私は思わずかける声を失い、歩く足が止まりそうになった。
「その考えはなかったわ…」
「不器用すぎ。あ、駅見えた」
「ほんとだ」
はじめこそ気まずかったけれど、なんだかんだ話しやすくて、あっという間に駅に着いてしまった。むしろ、時間が足りなかったくらいだ。もう少しゆっくり話してみたいなんて思う自分にびっくりだ。
改札の前で「ありがとう」と声をかけると想くんは「またね」と笑って手を振った。私と想くんに果たして『また』はあるのだろうか。