あんずジャム


「えっと、ゆきねさんが、もう休憩に入れって…なので、えと……良ければ外で少しお話ししませんか?」



玲也はスタッフルームの方に目をやり、ゆきねがうなずくのを確認し、優羽に向き直る。



「もちろん。外…すぐそこの公園でいい?」


「はい…!」



すぐそこの公園というのは、確か桜公園という、店の目の前の公園のことだ。

トラウマの残る椿公園よりもう少し広い。

名前の通り、春に咲く桜は見事だ。




優羽と玲也はその公園のベンチの一つに座った。


土曜日ということもあり、小さな子ども連れの家族や、犬の散歩をする人なんかがたくさんいる。



(ど、どうしよう…)



店から連れ出して二人になれたのは良いが、こうやって隣に座っていることに緊張してきた。

昨日も同じような状況だったが、あの時とはまた精神状態が違って…ようするに、今は変に意識してしまっていた。

好きな人が隣にいる、と──




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