あんずジャム
玲也は軽く息を吐き、今度は距離感に気をつけながら優羽の方を見た。
「昨日は、あれから大丈夫だった?」
ようやく普通の会話が始まり、優羽は少しホッとする。
「はい。ゆきねさんに家まで送り届けてもらって。
あの!昨日は本当にありがとうございました」
優羽は深々と頭をさげる。
玲也はそんな優羽に、大袈裟だなあ、と笑った。
「えーっと…店長、すごく気さくな人なんだけど、しゃべるの好きだから…その…何か、ほら、変なこと言ってたら気にしないでね」
玲也は何故か少し顔を赤らめ、目をそらしながら言う。
「変なこと、ですか?」
「あー、ほら…俺が優羽ちゃんのこと助けに行ったことを冷やかすようなこととか…
いや、やっぱり何でもない」
「ゆきねさんは良い人でしたよ。
私もあんな素敵な女性になりたいな…なんて」
優羽は自分で言いながら、少し照れて頬をかいた。
照れたついでに、と思いきってクッキーを取り出す。