あんずジャム
フットワークの軽い姉を慌てて止める。
そしてふと思う。
(あれ、もしかしてあのカフェに行く理由ができた…?)
気に入っていたジャムが無くなったから買いに行く。
優羽が動くのにも十分な理由だ。
例の店員が気になるのではなく、あくまでジャムが欲しいから。
(よし…!)
優羽は、部屋に戻って着替えを探す。
決心が鈍らないうちに行動しなければ。
いつもはあまり服に気を使わないけど、今日は時間をかけて選ぶ。
そして鞄にいくらか入った財布と携帯を入れ、美羽に声をかける。
「美羽ちゃん!ちょっと出掛けてくるね!すぐに帰るから!」
「え?わ、分かった。行ってらっしゃい」
美羽は、いつの間にか、いつもより少しオシャレな服に着替えて、急いで出掛けようとする妹を戸惑ったように見送った。