あんずジャム
「今日はだいぶ売れてしまったので、残ってるのはスコーンとチョコチップマフィン、あとは当店特製のジャムくらいしかありませんが…」
玲也は商品の棚を確認しながら言う。
「ジャムは試食もできるので、良かったら。」
「わあ!嬉しい!種類は何があるのかしら?」
「ええと…イチゴとリンゴ、ブルーベリーにあんず、あとはキウイと桃です」
玲也は試食用のビンとプラスチック製のスプーンを取りだし、イチゴジャムを少量すくって二人に渡す。
「わあ、美味しい!」
ジャムを口にした母親は、少し驚いたように声をあげる。
この店のジャムは店長のこだわりで、スーパーなどで売っているものよりずっと美味しい。
ただ…
(あんまり気に入らなかったかな…?)
母親と対照的に、娘の表情はほとんど変わらず、あまり読めない。