あんずジャム
それから20分ほどして、優羽たちは勉強を切り上げることにしたらしく、こちらの方に来た。
代金はまとめて払うことにしたのか、来たのは優羽だけだった。
優羽は玲也の顔を見ても、何か気にする様子もなくお金を払うと、特に顔を上げるでもなく、さっさと店を出ていった。
(気づいていての無視なのか…気づいてないのか…
でも確かに、気づいていたとしても反応しずらいよな…)
どちらにしても玲也を落ち込ませるのには十分だ。
だが
(ん?)
少しため息をついて下を見た時、お金を入れたトレーにメモ帳のようなものが残っていることに気がつく。
そっと開いてみると…
そこには、筆圧弱めの綺麗な文字で
『ありがとうございます。スコーンとジャム、すごく美味しかったです。テストも頑張ります』
そう書いてあった。
間違いなく、玲也に宛てて書かれた、優羽からの返事だ。
目を見開き、何度も目を通す。
(まじかよ…やばい、メチャクチャ嬉しい)
玲也は緩む口許をそっと押さえた。