あんずジャム
「思い出したよ…すっげぇ思い出した…」
剣斗は顔を上げずにブツブツと何か呟いているが、美羽はそのまま続きを話そうとする。
「写真がちゃんと撮れたことに満足してベンチに座ったら、隣に座った剣斗が私の腕を取って…」
「美羽!何で優羽ちゃんの前でそんな事細かに説明しようとしてんだよ!」
優羽は剣斗に悪いと思いつつも、好奇心に勝てなかった。
「あの、剣斗さんはいつから美羽ちゃんのことを…?」
「っ…」
剣斗は再び顔を赤く染め、それから開き直ったように言った。
「めっちゃ昔からだよ!小一で俺のクラスに転校してきた時からずっと!俺の人生ほぼほぼ美羽に縛られてたよ!」
「剣斗…」
美羽は驚いたような表情をして、剣斗の目を見つめる。
「…俺の片想い歴、なめんなっつーの」
優羽は剣斗の優しげな声を聞きながら、自分がここにいて良いのか迷い始める。
姉はそんな妹の内心に気づくはずもなく、恋人の言葉にはにかんだように顔をほんのり赤く染め──