あんずジャム
自分のことを言われていると気づいた少女は驚いたように顔を上げる。
「あ…の…」
「あれ、そういう訳じゃなかったんでしょうか…」
自信を無くしかけて声を小さくする玲也に、彼女は首を振った。
「い、いえ。その、あんずジャムが一番美味しかった、です…」
彼女の言葉にホッとする。
母親は娘のそんな様子を見て、微笑みを浮かべた。
「じゃあ、あんずジャムで。
あ、あとはスコーンも三つください」
「はい!かしこまりました」
玲也は慣れた手つきで賞品を包装して、財布を確認している母親の代わりに少女に手渡す。
「あんずジャム、小瓶のもおまけでつけておきました」
こっそり少女にささやくと、彼女は「え…」と声を漏らして玲也の方を見た。