あんずジャム
なるべく事務的に水だけついで立ち去ろうとするが、彼女らがそれで許すはずがなかった。
「お兄さぁん、彼女いないんだよねぇ?」
「……ええまあ」
恋人がいないか確認されたのは、二人が前々回来店した時だ。
前回は好きなタイプをしつこく尋ねられた。
それが玲也が彼女らのことが苦手な一番の理由だった。
「フフ、じゃあー、この子とかどぉですかぁ?マイちゃん彼と別れたばっかでぇ、新しい彼氏募集中なんですよぉ」
「ちょっとやめてよー、エリ!それじゃあまるでマイが誰でも良いから付き合いたがってるみたいじゃん」
「…」
キャハハと声を揃えて笑う二人のもとから、さりげなく去ろうとする。
が…
「ちょっとお兄さぁん、逃げないでよぉ」
そう簡単に逃がしてもらえるはずもなく…
「すみません…」
「マイちゃんはぁ、友達のアタシから見てもかわいいしぃ、本当にオススメ」
「んふふ…エリったら…
でもでも、お兄さん、今度マイとどこかでお茶でもしませんかー?」
「すみません、そういうのはちょっと」