あんずジャム
カランカラン──
ドアが開く音がした。客が来たのだろう。
だが、彼女たちが拘束を解いてくれるとは思えない。
困りつつも、玲也は振り返り、客の姿を確認する。
(あ──)
そこには、驚いたような顔でこちらを見ている優羽がいた。
(最悪だ…)
優羽と目が合った瞬間、そう思った。
想いを寄せている相手に、好きでもない他の女性に言い寄られている姿を見られて、嬉しいわけがない。
そんな玲也のことなど知る由もない二人は、お茶の誘いを断った玲也に不満げな様子である。
「つれないなぁ、お兄さん」
「そんなー…じゃあじゃあ、せめて連絡先だけでも教えてもらえませんかー?」
潤んだ目で見上げてくるマイという女に、若干の罪悪感を覚えつつもはっきり断ろうと口を開く。
「それもできません。」
しかし、それでも引き下がる気配はなかった。
「いーじゃん、それくらい」
「そうよ!アタシたち、この店の常連なんだしぃ」