あんずジャム
「そーそー、お客さんにはサービスしなくちゃー」
玲也は困り果てて、弱々しく微笑んだ。
ちなみに、彼女らは常連を自称しているが、玲也が知る限り、来店したのはまだ4回目くらいのはずである。
覚える気がなくとも、これほど騒がれたら嫌でも覚えてしまう。
そんな時、ガタン、という音がした。誰かが勢いよくイスから立ち上がったのだろう。
その音の主は、こちらに近付いて来た。
「あの!そ、そういうの、良くないと思います!」
「…!」
優羽だった。
突然の登場に、二人の機嫌があからさまに悪くなるのが分かった。
(優羽ちゃん…どうして)
玲也もまた、突然の彼女の行動に驚きを隠せなかった。