あんずジャム
いったい何が自分を変えたのか。
優羽はスコーンを食べ終えると、玲也に一目会いたいという当初の目的も果たしたので、そろそろ帰ろうとレジへ向かった。
レジには時々見かける若い男性の店員がいた。
玲也でなかったのを少し残念に思っていると、その店員は優羽の姿を見ると、少し待つように言い、どこかへ行った。
すると、戻って来たのはその男性店員ではなく、玲也だった。
彼は、優羽の顔を見ると、微笑んだ。
ドキリと心臓が大きく音を立てる。
それでも、平静を装って財布を取り出そうとした時──
「先ほどは、ありがとうございました、優羽ちゃん」
玲也が頭を下げてそう言ってきた。
優羽もつい慌ててそれに倣う。
「い、いえ、余計なお世話だったんじゃないかって不安だったくらいで…」
そこまで言って違和感に気づく。
「ん?名前…」
優羽に言われ、玲也は何故か少し慌てたような顔をする。
「あ、すみません。この前偶然、教科書に書いてあった名前が見えて…あとお友達もユウって呼んでいたので…
優しい羽、で優羽ちゃん、ですよね?」