あんずジャム
優羽は仕方なく配られたプリントに記名しようとシャーペンをノックする。
が、芯が出てこなかった。
(あれ、芯がきれてる)
あいにく、シャーペンは一本しか持っていないし、ケースの中にも予備の芯がもう無い。
昨日帰りに買おうと思って忘れていたのだ。
プリントには大きなメモ欄もあり、何も書かないでいるわけにはいかないだろう。
(どうしよう…とりあえず赤ペン使おうかな)
そう思っていると、隣から軽く机を叩かれた。
「どうかした?」
「あ、えっと…」
先ほどの彼に小声で聞かれて、優羽は少し迷った後、シャーペンの芯がないことを相談する。
すると、彼は快く一本貸してくれた。
会議終了後、立ち上がろうとした彼を慌てて引き留める。
「あの、シャーペンの芯、ありがとうございます。次の会議の時に必ず返します」
「え?いいよ別にそれくらい」
「でも…」