あんずジャム
彼は少し茶色っぽく染めたらしい髪(この学校の校則は結構ゆるい)をかきあげ、少し迷うような顔をする。
端正な顔立ちから、きっと女子からの人気はすごいのだろうと想像される。
その綺麗な顔立ちといい、最初に見せた優しそうな笑顔といい…
(ちょっと、神田さんに似てるかも)
自分で思っておいてなんだが、そんな風に意識してしまうと、今度は違う意味で緊張してしまう。
彼はそんな優羽に、またあの笑顔を向ける。
「じゃあさ、シャー芯はもういいから、代わりに君の名前教えてよ!2年生だよね?」
「あ、はい…赤崎です。C組の赤崎優羽。」
「俺は3年D組の坂井誠(さかいまこと)。よろしくね、赤崎さん」
「よろしく…お願いします…?」
「さっそくだけど赤崎さん、部活は?」
「入ってないです…」
「そっか。鞄に定期ついてるし、電車通学だよね?俺もそうだから一緒に帰ろう」
「え!?あ、はい」
何なんだ、このフレンドリーな人は…
優羽はそう思いながら、勢いのまま了承する。
もちろん、目をそらさないよう意識するのを忘れてはいない。
誠に続いて教室を出る。
優羽は関わったことのないタイプの先輩に戸惑いながらも、仲良くなれそうだと思うと嬉しくて、少し浮かれる気持ちもあった。