あんずジャム
「そうだったんですか。実は俺も北高校の出身なんですけど、一年の時に文化祭実行委員やってたんです」
「え、そうなんですか?」
玲也が同じ高校に通っていたことへの驚きか、かつて文化祭実行委員をしていたことへの驚きかは分からないが、優羽はパッと目を見開いて玲也を見た。
優羽は座っているので、自然と上目遣いになっており、思わずドキリとする。
「はい。あの学校、けっこう文化祭に力入れているから忙しいんですよね」
「はい!そうなんです。思った以上にやること多くて…
でも委員は自分で引き受けた仕事なので、ちゃんとやりたくて」
照れくさそうに頬をかく。
玲也は何となく、彼女らしいな、と感じる。
「頑張ってくださいね!」
「はいっ!」
優羽は注文するものは、いつもだいたい決まっているので、今日は玲也が立ち去ろうとする前に注文をした。
今日彼女が注文したのは紅茶のみ。
だが、玲也は紅茶の他に、彼女のお気に入りのあんずジャム、それと付け合わせにスライスしたバゲットを運んで行った。
当然、優羽は戸惑ったように言う。
「あの、今日は紅茶しか注文してないんですけど…」
玲也はそっと人差し指を立てて口許に当てる。
「文化祭委員を頑張る優羽ちゃんに、俺からのサービスです。」