あんずジャム
***


「お、神田!久しぶりじゃん」



校内をパンフレット片手に歩いていると、後ろからそんな声がした。

三年生の時の担任だった男性教師だ。



「田中先生!ご無沙汰してます」


「大学はどうだ~?実家から通ってるんだったか。たまには顔見せろよ」


「充実してますよ。あ、あと今は三駅先のカフェでバイトしてるので、よかったら来てください」


「カフェでバイトか…洒落てるな。さすがは神田だ。行ったらコーヒーでもサービスしてくれるか?」


「はは、考えておきます」



玲也は恩師に会釈して別れを告げ、待たせていた篤のところに戻る。

実は先ほどから、田中先生以外にもいろいろな教師陣に声をかけられており、何度も篤を待たせていた。



「悪い、待たせた」



そう言ったところで、近くを通りかけた女性に声をかけられた。



「あれ?神田くん?」


「あ、阪本さん!」



今度は元同級生だ。

玲也は篤の方を見て小声で頼む。


< 65 / 116 >

この作品をシェア

pagetop