あんずジャム


「待たせてばっかだから、先行きたいとこ行っててくれる?」


「お、おう…お前、すげえな…」



篤はそう苦笑して返す。



「分かった。じゃあ一足先にメイド喫茶行ってくるか」



篤がそう言って立ち去った後も、玲也は坂本以外の元同級生にも何度かつかまった。

結局、篤の待つ2年E組の教室の近くに着いたのは20分後だった。



(皆、母校の文化祭ってそんなに行くものなんだな…)



恩師や昔の仲間に会えるのは嬉しいが、精神的に疲れる。

E組の教室に行こうと思い、ふと反対を見ると──



(あ!)



これだけ大勢の人がいるのに、すぐに気がついたのは、我ながら不思議だと思う。

少し遠く、向こうは恐らく気がついていない。

だが、玲也には彼女だけが輝いているかのようにはっきりと分かった。彼女だけは見間違えない自信があった。



(優羽ちゃん…)



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