あんずジャム
坂井誠 優羽side7
文化祭という非日常で楽しい時間はあっという間に終了した。
優羽もまた、思う存分その時間を楽しんだが、唯一の心残りといえば…
(神田さんに、会えなかったな)
来ていたけど会えなかったのか、そもそも来ていなかったのか。
それすらも分からないが、どちらにせよ、残念な気持ちでいっぱいだった。
そして今日は、文化祭実行委員の集会も最後だ。
1年A組の教室に行くと、今回は坂井が先に来ていた。
優羽は隣に座りながら挨拶をする。
「坂井先輩、こんにちは」
「赤崎さん。今日で委員の仕事も終わりだね」
優羽は少し残念そうに言う坂井に、コクりとうなずく。
出会いはあまり良い思い出ではないが、坂井はその後の委員会活動でも何度も話しかけてくれて、一緒に帰ることもしばしばあった。
文化祭の当日は少しだけ一緒に回ったりもして、優羽は坂井のことをすっかり信頼していた。