あんずジャム
(あのカフェに行ったらまた会えるのかな?)
そう思った優羽はすぐにその考えを振り払う。
(いやいや、特に行く理由ないし)
学校までの途中の駅からすぐそこであるし、普通にお茶でも飲みに行けばいいのだが、優羽にとってはそれすらも難しいことに思えた。
何かしっかりとした理由がないと行動できない。
優羽の面倒な癖だった。
「…う、優羽?」
そんなことをいろいろ考えていたせいで、自分の名前を呼ぶ母の声にしばらく気がつかなかった。
「え、ああ。ごめん、何?」
「着いたわよ。どうしたの?ぼんやりして。珍しいわね」
母の言葉通り、いつの間にか優羽の住むマンションのすぐそばに来ていた。
このマンションの12階が優羽の家だ。