あんずジャム
「でもさ、そんな女の子とっかえひっかえして遊んでるって…あんまり見たことないんだけど、そんなに格好いいの?」
「うん。見た目だけは間違いない。
顔は本っ当イケメンだし、うちの学校の校則の緩さを利用した茶色い髪の毛はよく似合うし…」
茶色い髪の毛。
玲也が思い出すのは、文化祭で優羽と親しげにしていた男子生徒。
確か優羽は──
『坂井先輩!』
そう、確かにそう呼んでいた。
「っ!」
予感が確信に変わる。
今の話からすると、恐らく優羽と坂井という男子生徒は付き合ってはいない。
だが、彼女たちの言い方では、付き合っていない女性に手を出すことも十分に考えられる。
そして、人の少ない公園に連れて行かれて…
「…まあ、そんな気分悪くなるような話止めよ!あたし追加注文しよっかな
すみませ…」
玲也は手を挙げて店員を呼ぼうとしていた女子生徒のもとへ走り、彼女が最後まで言う前に、テーブルをドンと叩いた。
当たり前だが、二人は玲也の行動に、ポカンとしている。
しかし、そんなことに構っている暇などない。