あんずジャム


優羽がうなずくのを確認して、玲也は隣に座った。

先ほどまで坂井がいた場所なのに、玲也がいてくれるだけで、優羽はいくらか安心できた。



「…神田さん、どうしてここに?」


「ああ、えっと…北高のお客様が、坂井って男子生徒が女の子をこの公園に連れ込むのを見たって話をしてて…その女の子の特徴とか聞いて、もしかしたら優羽ちゃんじゃないかっていう嫌な予感がしたから…」


「そうだったんですか…」



確証はないのに、優羽かもしれないと思っただけでこんなに息を切らして走ってきてくれた。


すごく…ものすごく嬉しい。


そう思ったのに、あんな場面を見られてしまったという、恥ずかしさが勝り、素直に喜べなかった。


何かしゃべっていないと、また泣いてしまいそうで、優羽はわざと茶化すようにしゃべる。



「本当、ありがとうございました。
でも、あれですね……ファーストキスって、案外簡単に奪われちゃうものなんですね。
少女漫画とかだと付き合う前に唇を奪われた…みたいな話でも、その相手は好きな人じゃないですか…まさか好きじゃない人にされるって想像してなかったというか…」


「…キス、されたの?」



うっかり口を滑らせたことに気づいたが、もう遅い。

玲也は優羽と目を合わせないままそう聞いた。



「……はい」



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