あんずジャム


玲也は少し考えてから、ケータイを取り出した。



「うちの店長に頼んでみようか。」


「え…」



【Cafe: snowdrop 】の店長といえば、確かあの格好いい女の人だ。

数回顔を合わせたことがあるだけだが、たぶん優羽の母と同じくらいの歳で、すごく綺麗な人だった。



「い、いいですよ!駅すぐそこですし、自分で帰れます!」


「だめ。このまま放っておけるわけないでしょ」



そう言われて何も言い返せず、その隙に玲也は電話をかけた。



「店長?実は…えっと、まあ色々ありまして、何も聞かずに車で椿公園まで来てもらえませんか?…え、仕事…篤がいるので大丈夫ですよ。は、はい、もちろんすぐ戻りますけど」




玲也が電話をする声を横で聞きながら思う。



(仕事…途中で抜けてきたんだな)



申し訳ない気持ちでいっぱいにたると同時に、優羽のためにそこまでしてくれたのだと、やはり嬉しくもあった。


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