あんずジャム
優羽は母を軽く押すようにしてリビングに入る。
母は「じゃ、お願い」と言ってソファーに座っている美羽の隣に腰をおろした。
「母さん、今回はいつまで日本にいるんだ?」
「一週間くらいいるつもりだったんだけど、結局急な仕事が入っちゃってね…明後日の朝には発つわ」
「次はどこに?」
「フランス。しばらくはヨーロッパに滞在かな」
優羽は二人の会話を聞きながら台所で夕飯の支度を始める。
(お魚が冷凍してあったな…とりあえずキャベツのサラダと味噌汁作るか。ご飯も炊かなきゃ)
慣れた手つきで用意を進める。
炊飯器のスイッチを入れ、味噌汁を作り始めた。
味噌を溶かしている間、ふと、またあのカフェの店員のことを思い出した。
(いつもあの店にいるわけじゃないよね…
バイトなのかな?いつならいるんだろ…)