あんずジャム
ガタンという音と共に、優羽はティーカップを落とした。
飲んだ後だったので、中身がこぼれたりはしなかったのはラッキーだった。
「す、すみません」
「大丈夫よ」
ティーカップを拾って机の上に置くと、優羽は両手をひざの上に置いて軽くうつむく。
「な…んで、分かるんですか?」
「だって、玲也のことを話す時、すごく幸せそうな顔してて…何か、完全に恋する乙女って感じだったから」
体温がみるみる上昇していく気がする。
恐らく、耳まで真っ赤だ。
「じゃあ、いつもだいたい同じ曜日に来るのも、玲也がいるから?」
「…そんなことにも気づいてたんですか?」
玲也がシフトに入ってないのは火曜日と木曜日。
優羽がその曜日に店に行くことはほとんどない。
「告白しないの?」