あんずジャム


「一部では死を象徴する花とも言われるみたいだけど、私は希望の花だと思ってる。
…だって、こんなに可愛い花が死を象徴するなんて、イメージ湧かないじゃない?」



それには優羽もうなずく。

冬の終わり…つまり、春の始まりに咲くのなら、やはり希望というイメージがしっくりくる。



「この花を教えてくれたのは、大学時代の恋人だったの…」



目を細めたゆきねは、「恋バナなんて…若い子達の女子会みたいね」と照れくさそうに笑う。



「これでも、昔モテてたのよ?」


「それはすっごくイメージできます」


「わあ、良い子だわぁ…
そう、それでね、彼が告白してくれた時、私フリーだったから、断る理由もなくて何となく付き合いだしたの」


「どんな人だったんですか?」



優羽の問いに、ゆきねはうーん、としばらく考えてから言った。 



「花屋の息子でね…まあ、イケメンではなかったかな。だけど、色んなことに一生懸命で、素敵な人だったわ。
花屋の息子だからなんだろうけど、花に詳しくてね。初めて会った時、私の名前を見て『スノードロップだ』って言ったの。」



雫井ゆきね

彼は「雫」と「ゆき」からスノードロップを連想したのだという。


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