ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
だいぶ場の緊張が解れて和やかになってきた中、母が呆れたように笑いながら言う。


「この子ったら、小さい頃から酒蔵に入り浸っていて、二十歳を過ぎたらさらに日本酒にのめり込んでしまったんです。もっと色気のあることに興味を持って、女を磨いたほうがいいんじゃないかというくらいで」


余計なお世話だよ、という気持ちを込めて、私はじとっと母を睨んだ。

確かに、こんなに日本酒が好きな女子は友達にもいないし、男子からは“オジサンかよ”とからかわれていた。おかげで男友達は多かったし、自分の趣味を貫いて楽しく過ごしてきた。

でも、やっぱり女としての魅力には欠けるんだろう。

たれ目がちの童顔をごまかすために一応メイクもするし、ファッションも人並みに気をつけてはいるけれど、彼氏ができなかったことがなによりの証拠だ。

こんな私が妻になるなんて、朝羽さんは不満かな……と心配になった、そのときだ。


「夢中になれるものをお持ちの女性は、輝いていて素敵ですよ」


これまで口を開かなかった彼からこんなセリフが紡がれ、私は目を丸くした。母たちも静かになり、彼に注目する。

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