ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
一時は恋人同士で、彼女のことを本気で好きだったのに裏切られて、女性を信じられなくなった。

朝羽さんにはそんな過去があるのではないかと勝手に想像してしまい、胸がわし掴みにされたみたいに苦しくなる。

ただの噂だと受け流していいものか、と不安になり始める私に、大石さんがさっぱりとした調子で言う。


「でも、今こうして初音ちゃんが婚約してるんだから、もう全部関係ないことよね」


嫌味のない笑顔でぽんと肩を叩く彼女に、私も笑みを返した。

大石さんの言う通り、もしふたりの間になにかあったとしても、もう終わったことのはず。そもそも私の気にしすぎかもしれないし、深く考える必要はない。

それなのに、胸の中にはもやもやしたものが渦巻いて仕方ない。

なぜこんなに勝手な推測をして重い気分になっているんだろう、と自分に首を傾げたくなりながら、マンションに帰宅した。



夕飯の準備を始めて少し経った頃、ダイニングテーブルに置いておいたスマホが鳴り始めた。

ディスプレイに表示されるのは、すでに懐かしく感じる真琴の名前。嬉しさが込み上げ、素早く受話器のマークをタップして応答する。

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