ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「もしもし、真琴!?」

『初音、久しぶり。どうよ、元気でやってる?』

「元気だよ! 会いたいよ~」


東京に出てきてから、結局まだ一度も帰れていないため、彼女の声を聞いただけで地元が恋しくなる。

電話越しに泣きつく私に、真琴は『全然帰ってこないから、もう都会に染まっちゃったのかと思った』などと涼しげな声で言う。

甘い文句は口にしない彼女だけど、ちゃんと私のことを気にかけてくれているのは伝わってくるから、やっぱり大好きだ。

時刻は五時を過ぎたところで、居酒屋うらうらが開店するにはまだ時間がある。

ダイニングテーブルの椅子に座って、しばらくお互いの仕事や東京のこと、友達の近況なんかをほくほくした気分で話していると、真琴が“本題だ”というような調子で問いかける。


『で、ホテル御曹司とは仲良くやってるの?』


……当然その質問はされるよね。

仲は悪くないものの、自信を持って認めるのもためらわれる。さらに昼間の件を思い出して複雑な気分になり、「うん、まあまあ……」と、曖昧に答えた。

電話の向こうで、腰に片手を当てて若干呆れている真琴の姿が思い浮かぶ。

< 106 / 273 >

この作品をシェア

pagetop