ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「ふたりは相変わらずだね。なんかもう家族みたい」

『私もそんな気がしてる』


珍しく素直に同意する彼女に、“ていうか、家族になっちゃいなよ”と冷やかそうとしたとき、小さく息が吐き出される。


『シローさんのいいところも悪いところもほとんど知ってるけど、知りすぎてるのもどうなんだろうね』


どこか憂いのある声で口にされたその言葉には、彼女の複雑な気持ちが滲んでいるような気がした。

相手のことを知りすぎていると、恋愛感情が湧きにくかったりするのだろうか。好きになりたくても、あと一歩のところで踏み止まってしまうのかも。

真琴は今その状態なのかな。私からすると、全部さらけ出せる相手ってすごく貴重だと思うけど、人それぞれだよね……。

考えを巡らせて黙り込んでいると、真琴の声色がさっきまでの明るさに戻る。


『初音は、彼のことを知っていくのが楽しい時期だもんね。ちょっと羨ましい』


今日の真琴はなぜかとても素直だ。なにか心境の変化でもあったのだろうか。

少々気になりつつも、こちらのことをよく理解してくれている彼女に話を聞いてもらいたい気持ちのほうが強くて、「私はさ」と切り出す。

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