ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
こんなんじゃいけないのに……と、今日もぼんやりしながらスープの味見をしていたときだった。


「ただいま」

「あっ!? お、おかえりなさい!」


ダイニングのドアが開くとともに朝羽さんの声がして、私はようやく我に返った。

いけない、もうそんな時間? ムニエルにしようとしている白身魚は、まだ下味をつけたままだ。

ソファにバッグを置き、スーツの上着を脱ぐ彼に近寄る私は、肩をすくめて謝る。


「すみません、ぼーっとしちゃってたからまだ夕飯できてなくて。先にお風呂に入りますか?」

「いや、あとでいいよ。それより……」


彼はネクタイを緩め、シャツのボタンもひとつ外した姿で私に向き直る。ちらりと見える首筋から色気が漂っていて、ドキッとしてしまうのは今に限ったことではない。


「初音、最近上の空になってるときが多いだろ。なにか悩み事でもあるのか?」


整った眉をわずかに潜めて言われ、ギクリとする。

女性のことには若干疎い朝羽さんでも、私の様子がおかしいことに気づいていたらしい。でも、悩みの根源である彼に打ち明けられるわけがない。

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