ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
◇願わくば愛があらんことを
兄が来る予定の土曜日、早番にしてもらった私は、仕事を終えて軽くメイクを直すと、一階のロビーに向かった。
いつもより多くの宿泊客が次々と手続きをする中、すでにチェックインして待っているであろう兄の姿を探す。会うのが久々でも、見慣れた顔の彼はすぐに見つけられる。
「しろちゃん!」
ソファに座っている兄に歩調を速めて近寄っていくと、私に気づいた彼もぱっと顔を輝かせ、弾かれるように立ち上がった。
そして両手を広げ、「初音~!」と大胆なハグをかましてこようとする兄の前で足を止めた私は、冷静にストップをかける。
「待った、ここ高級ホテルだから」
「はっ、そうか」
真顔になって自重する兄に吹き出しつつ、相変わらずな様子にホッとした。
でも今日のしろちゃんは、なんだか雰囲気が違う。少しだけ髪が伸びて、ホテルに合わせたきれいめな服装をしているからかな。
いつもよりあか抜けて見える彼は、変わらない愛嬌のある笑顔で私の肩をぽんと叩く。