ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜

そういえば、朝羽さんは三十歳にして霞浦グループの専務であり、都内の高級ホテルで総支配人を兼務しているのだと聞いていた。

彼のホテルで私たちの商品をアピールしてもらえるなら、今よりも売上を伸ばすことができるだろう。とてもありがたいことだ。

この結婚の目的と利益を改めて実感していると、私に向けられた朝羽さんの漆黒の瞳に捕われる。


「足りないのは、あなただけだ」


ドキン、と心臓が強く波打った。まるで彼自身に求められているかのように、錯覚しそうになってしまって。

目を見開く私はさておき、朝羽さんは淡々と話を続ける。


「販売員兼アドバイザーとして、こちらに来ていただきたい。あなたなら、商品を求める方々に満足してもらえる説明やサービスができるはずです」


……あぁ、なるほど。私の力を発揮できるだとか、足りないだとかいうのはそういうことなのね。