ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「品行方正でそつがなくて、英語もペラペラで。あの歳で総支配人なんて、単なる親の七光りじゃねーかと思ってたけど、文句のつけどころがなかった。ほんと憎らしいヤツだよ」


仏頂面のまま、ぶっきらぼうに口にされた言葉の数々は、しっかり朝羽さんのことを褒めている。一瞬キョトンとした私は、すぐに嬉しくなって笑いをこぼした。

……なんだ、よかった。少しは朝羽さんのことを認めてくれているみたい。素直じゃないんだから。

面倒な兄はやっぱり愛おしく、子供の頃のように飛びつきたい衝動に駆られる。でも、さすがに今はみっともないから抑えて、ひとこと呟いた。


「しろちゃん、大好き」

「あっ!? おい、不意打ちでそういうこと言うなよ、萌え殺す気か」


今の“好き”はもちろん家族としての意味で、それを兄もわかっているけれど、ポッと頬を染めてあたふたする様子がおかしかった。

……朝羽さんにもこうやって自然と告白できたらいいのにな。

でも、本気の想いだからこそ、簡単には口にできないのかもしれない。

ふと思い浮かんだその考えは、ひとまず頭の隅に置いておき、幼少時代に戻ったように兄に寄り添い、ショップの案内をするのだった。

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