ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
礼儀をわきまえていて、さらにとても話しやすそうな雰囲気の人だ。

兄も同じものを感じ取ったのだろう、銀色のシェイカーにいくつかのリキュールを入れる彼に、フレンドリーに話しかける。


「俺たち、実家が酒蔵なんですよ。飛高酒蔵っていうんですけど、ぜひ名前だけでも覚えていただければと~」

「ここでも営業か」


お笑い芸人のような調子で言う兄に軽くツッコむと、シェイカーを振ろうとした彼の動きがぴたりと止まった。なにか思い当たったらしく、「飛高酒蔵……」と呟いている。

そして、私をじっと見つめ、こんなひとことを口にする。


「失礼ですが、あなたのお名前は飛高初音さん、ですか?」

「えっ、なんで──」


私の名前を知ってるの!?と一瞬驚愕したものの、即座にひとつの可能性が浮上して目を見張る。


「もしかして、朝羽さんのご友人の大和(やまと)さん……!?」


考えられるのは、朝羽さんが私について話していたということしかない。

そう推測して、こちらも以前耳にしていた名前を聞けば、目の前の彼は破顔して「えぇ、そうです」と頷いた。

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