ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「えぇ。俺ははっきり言いますよ、愛してるって」

「キモいよ」


たまらずツッコんでしまった。彼は少しの怒りと悲しみが混ざったような、おかしな顔をこちらに向ける。


「兄ちゃんに向かってなんてことを……。ったく、今夜は帰さないからな」

「キモいってば」


顔をしかめてもう一度拒絶すると、大和さんが面白そうに笑った。

少女漫画のヒーローみたいなセリフをしろちゃんに口にされても、ときめくわけがない。まぁ、冗談のやり取りだから、ちょっと楽しくもあるけれど。

美味しくてオシャレなカクテルをお供に、私たちはしばらくこんな調子で笑い合っていた。


 *


一時間ほど大人なひとときを過ごしてバーを出たあとは、兄が泊まる部屋まで送ることにした。

スタンダードルームよりひとつランクが高く、さらに運良く二十階の眺めがいい部屋を取れたと朝羽さんから聞いていたので、ついでに中に入らせてもらう。

すると、夜景はもちろん、高級感がありながらもくつろげる空間が広がり、思わず感嘆の声が漏れた。大きなベッドとソファが備付けられ、バスルームも広々としている。

< 129 / 273 >

この作品をシェア

pagetop