ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
とても居心地が良さそうな部屋をひと通り観察して、ベッドに腰を下ろした兄のそばに歩み寄る。ほろ酔いでいい気分だ。


「あー楽しかったぁ。お酒も美味しかったし、久々にしろちゃんといっぱい話せたし」

「だな。つーか、あいつと一緒に帰ったほうがいいんじゃないの?」

「大丈夫だよ。マンション近いから」


気遣ってくれる彼に、軽い調子で返した。

まだ八時半だし、ひとりで歩いたって危なくはない。朝羽さんはもう帰っているだろうし。

そろそろ私も帰らなきゃな、と名残惜しい気持ちになっていると、「……俺さ」と兄が口を開く。

両手を後ろについてくつろぐ彼は、いつの間にか真面目な表情になっていた。


「初音が出ていってから、本当に心配してたんだよ。いきなり好きでもないやつのとこに嫁いで、友達も知り合いもいない土地でうまくやっていけんのかなって。俺だけじゃない、親父も母さんも、真琴も皆心配してた」


真剣に語られる話に、私は立ったまま耳を傾ける。

……そうだよね。私が東京に来るとき、皆明るく送り出してくれたけど、本当はすごく不安だっただろう。もしかしたら、私以上に。

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