ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
でも、たいして遅い時間でもないのに、抱きしめるほど心配する? この部屋に来たということは、私がまだしろちゃんといるとわかっていたのだろうし、それなら気を揉む必要もないのに。

困惑するわドキドキするわで、彼の腕の中で固まっていたとき、はっと思い出した。隣には兄がいることに。

目だけ動かして見やれば、抱き合う私たちを、彼はまるで魂が抜けたかのように呆然と目に映している。

これはマズい……。応援してくれるようになったとはいえ、さすがにこんなシーンを目の当たりにしたら、しろちゃんの不機嫌メーターが振り切れちゃうかもしれない!

ドギマギしていると、なにかに気づいたらしき様子で、兄はゆっくりと口を開く。


「……もしかして、俺が初音になにかすると思いました? 本当の兄妹じゃないから」


え、それって……朝羽さんは、しろちゃんが私に手を出そうとしてると勘ぐっていたかもしれない、ってこと? 違うでしょ、絶対!

くっついていた身体を離して反論しようとすると、朝羽さんは私の肩をぐっと抱き寄せ、兄に向き直る。

そしてしっかりと兄を見据え、「えぇ」と頷いた。

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