ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
そうなの!?と、ギョッとして朝羽さんを見上げれば、彼は冷静な顔で淡々と言う。


「初音に対する志楼さんの溺愛の仕方は、普通の妹に対するそれではないんじゃないか、と疑ってしまいました。少々引くレベルでしたし」

「正直だな、おい」


ぽかんとしていた兄だけれど、朝羽さんの最後のひとことにはツッコまずにいられなかったようだ。

朝羽さんって、決してわかりやすくはないものの、素直に思ったことを言う人なのよね。でも、まさかそんなふうに疑っていたとは。

意外すぎてなんの言葉も出てこない私の隣で、彼はクールさの中にかすかな情熱を湛えたような表情になって続ける。


「でもきっと、あなたは純粋に妹として初音を可愛がっているんですよね。手離したくないのもわかりますが、私にとっても彼女は大切な人です。これからは、彼女のそばにいるのは私でありたい」


ちらりとこちらに向けられた視線と、力強くも甘い言葉で、ドキン!と心臓が大きく跳ねた。

そのセリフ……夫婦という形式上での意味で言っているの? それとも、心から想って──?

ざわめく胸の中で問いかけていると、朝羽さんは「申し訳ありませんが、今日はこれで失礼いたします」と、丁寧に一礼する。

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