ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
ひとり後悔していると、黙っていた朝羽さんがこんなことを口にする。


「“今夜は帰さない”ってセリフ、俺は使えないな。同じ家だから」

「そ、そうですね」


普段の口調に戻って冷静にツッコまれ、私は肩透かしをくらった。

このそっけなさ……もしや、彼はまだ私の気持ちに気づいていないのだろうか。それなら、仕切り直してちゃんと告白できるかもしれない。

……と、思案したのはつかの間だった。


「だから、俺はこうする」


そんなひとことが聞こえた直後、急にこちらに伸びてきた手が髪に差し込まれ、彼のほうを向かせられる。

魅惑的な顔が間近に迫ってきて驚いた瞬間、さらなる衝撃で、私は目を見開いた。


……唇が、熱い。私たちの距離がゼロになっている。

伏せられた瞳を、こんなに間近で見たことはない。彼の肌の匂いや、息遣いをこんなに強く感じたことも、唇の柔らかさも──。

すべてが初めてで、これがキスなのだと、すぐには理解できなかった。

な、なんで、キスを……!? これは夢?

ぴたりと密着したそれは、おそらく数秒で離れていく。ゆっくりと開いた綺麗な双眼に捉えられ、止まっていたも同然の心臓が激しく動き出す。

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