ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
呆然とする私の頭を、自分の胸に引き寄せた朝羽さんは、耳元で甘く囁いた。


「今夜は朝まで離さない」


ドキン!とさらに鼓動が大きくなり、全身が発熱する。

そ、そうか……これは“今夜は帰さない”というひとことを言い直したものなのね。でも、湧いてくる嬉しさや緊張感が、しろちゃんのときとは比べ物にならない。

まさか朝羽さんが、私にキスをして、独占的な言葉を囁くなんて。

しろちゃんとふたりで飲んでいたこともよく思っていないようだし、もしかして……。

自意識過剰かもしれないが期待してしまい、彼のシャツをきゅっと握ったそのとき、エレベーターが静かに止まる感覚がした。

朝羽さんも身体を離し、ほどなくして扉が開いてお客様が乗り込んでくる。その間も、密かにお互いの指は絡み合ったままだった。


彼の真意が気になりすぎるけれど、どう切り出したらいいかわからない。いまだにキスの感覚も残っていて、心拍数は上がりっぱなし。

ホテルを出て、悶々としながらしばらく手を繋いで歩いていると、朝羽さんがゆっくり口を開く。


「……志楼さんの言う通り、嫉妬したんだ」


ドキリとするひとことで彼を見上げれば、どこか憂いを帯びた表情がそこにあった。

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