ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
着物の帯が苦しくなるくらい、ひと通り食事を堪能したあと、「ここからはふたりでごゆっくり」と、型通りの流れで両親たちは部屋を出ていく。
パタンと襖が閉められると一気に静かになり、なんとなく口に含んだお茶を飲み込む音すらやけに響くような気がする。再び速まり始めた心臓の音も聞こえてしまいそうだ。
とりあえず、沈黙を破るためにも一番気になっていることを聞いてみよう。
「あの」
思いきって話しかければ、凛とした力を秘めているような彼の瞳がこちらを見据える。
「朝羽さんは、私との結婚に異論はないのですか? ……実は、想いを寄せる方がいらっしゃったりとか」
私がこう確認するのは、ほかに好きな人がいるのに結婚しなくてはならなかった、祖母のことがあるからだ。
初めて祖母の日記を読んだとき、祖父と仲睦まじかった彼女が、実は別の男性への想いを胸に秘めていたのかと衝撃を受けたことを覚えている。
あの時代は政略結婚が多かっただろうし、似たような境遇の人もたくさんいたかもしれないけれど。
朝羽さんはそんなことはないだろうかと懸念していると、彼はすぐに口を開く。