ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
なんだか胸がいっぱいになり、じわりと潤む瞳で端正な顔を見つめていると、ふいに彼が私の肩を優しく押す。

驚く間もなく仰向けにされ、上に彼が覆い被さった。


「今はもう、あなたのなにもかもが愛おしい」


かすかな情欲を滲ませた色っぽい表情で放たれたひとことで、ドキン!と心臓が大きく跳ねた。

前髪が垂れた美しい顔を組み敷かれた状態から眺めるのは、ものすごく扇情的な気分になる。

その顔がゆっくり近づき、そっとキスを落とした。


一度離れた唇は、もっと、もっとと欲しがって何度も合わさり、濃密な口づけに変わっていく。

甘美で、幸福すぎるそれは、降り続く五月雨の如く繰り返される。鼓動の激しさはいつしか抑えられ、身体が溶かされていくのが心地いいとすら感じていた。

いつまでも離れないように、夜もすがら指を絡め合う。

私たちは、夫婦でありながら恋人としての一歩を、ようやく踏み出した。


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